相続税の税額控除(未成年控除)

概要

 

相続又は遺贈により財産を取得した者のうちに未成年者がいるときは、その未成年者の納付すべき相続税額はその未成年者の年齢に応じて、算出相続税額から一定額を控除することができることになっています。【相続税法19の3】

未成年者は、働いて収入を得ることが難しいことから、親等が亡くなった場合には、生活費や教育費などを相続財産に頼らざるを得ない場合があります。

そのため、未成年者にとって納付する相続税額がが、大きな負担とならないように配慮することを目的に、この「未成年者控除」の規定が設けられています。

 

未成年者控除の要件

未成年者控除を受けるためのには、以下の4つの要件をすべてクリアする必要があります。

①その者が、※居住無制限納税義務者又は※非居住無制限納税義務者であること

②その者が、被相続人の法定相続人であること

③その者が、相続又は遺贈により財産を取得していること

④その者が、未成年(20歳未満)であること

※2022年4月1日以降に発生する相続からは18歳未満となる

※居住無制限納税義務者とは、相続開始時に日本に居住していた者のことをいいます。

※非居住無制限納税義務者とは、相続人が日本国籍をもっており、海外に住んでいる者で、無制限納税義務者に該当する者のことをいいます。

 

未成年者が相続を放棄した場合

未成年者控除は、その未成年者が相続を放棄した場合であっても、遺贈により財産を取得しているときは、その適用が受けられます。

 

未成年者が養子であった場合

未成年者が相続人の養子でであっても、相続税の基礎控除の計算において、法定相続人の数に含めないといった制限はありませんから、上記の要件を満たしていれば、未成年者控除を受けることができます。

 

未成年者控除の控除額

未成年者控除の控除額は、次の算式により計算します。

控除額

(20歳-相続時の年齢)×10万円=未成年者控除額

控除される未成年者控除額は、その未成年者が20歳に達するまでの年数につき、10万円を乗じて計算産することとされてます。

なお、その年数が1年未満であるとき、又は1年未満の端数があるときは、これを1年として計算することとされています。

計算例)

相続開始時の年齢が、10歳4ヶ月だとすると、

20歳-10歳4ヶ月=9年8ヶ月 ⇒ 10年となり、

控除額は、10年×10万円=100万円となります。

※2022年4月1日以降に発生する相続の場合には、20歳 ⇒ 18歳となります。

 

控除の方法

A 未成年者の相続税額からの控除

この控除は、ます、未成年者の相続税額(相続税額の2割加算をし、贈与税額l控除及び配偶者に対する相続税額の軽減後の税額)から控除することとされています。

B 扶養義務者の相続税額からの控除

未成年者控除額が、その未成年者の相続税額より多いため、その未成年者の相続税額から控除しきれない場合には、その部分の金額は、その未成年者の扶養義務者で、同一の被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した者の相続税額から控除できることとされています。

この控除を受けることができる扶養義務者が2人以上いる場合の各人への控除額の配分は、次の①又は②の金額をとなります。

① 扶養義務者全員の協議により、控除不足額の各人への配分を決めた場合には、その配分額

② ①以外の場合には、扶養義務者の相続税額の比によって按分した金額

 

未成年者控除の手続き

未成年者控除の適用を受ける場合には、通常の申告書のほかに、相続税申告書の第6表「未成年者控除・障害者控除の計算書」の提出が必要になります。

 

相続人に未成年者がいる場合の対応

相続人の中に未成年者がいる場合には、その未成年者の代わりに、遺産分割協議や相続税申告の手続きをする代理人を選任する必要があります。

両親などの親権者は法定代理人に該当し、未成年者の代わりに様々な手続きを行うことが可能ですが、そこで問題となるのが、利益相反行為です。

たとえば、夫が死亡し場合の相続で、法定相続人が配偶者と未成年者の子供の場合の遺産分割協議においては、お互いに利益相反の立場となることから、利益相反行為と呼ばれ、法律で禁止されており、利益相反行為に該当するときには、親権者であっても代理人となることができません。

よって、親権者と未成年者の子が利益相反関係になる場合の遺産分割協議を有効なものとして行う場合には、「特別代理人」を選任する必要があります。

 

特別代理人

特別代理人は家庭裁判所が選任した代理人のことをいいます。

代理される当事者との間に利益相反関係がなければ、誰でも特別代理人となることが可能なので、未成年者の叔父・叔母等の親族でも特別代理人となることもできます。

 

特別代理人の選任方法

特別代理人を選任するには、家庭裁判所で選任の手続きを行う必要があります。

未成年者(代理される当事者)の住所地の家庭裁判所に次の書類揃えて、申立てをすることになります。

 

特別代理人の選任に必要な標準的書類

●特別代理人選任申立書

●未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)

●親権者又は未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)

●特別代理人候補者の住民票又は戸籍の附票

●利益相反に関する資料(遺産分割協議書案・契約書案等)

●収入印紙800円(未成年者1人につき)

 

 

 

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