特例事業承継税制(相続税の納税猶予)

概要

今後10年の間に中小企業・小規模事業者の経営者で70歳を超える者は日本企業全体の約2分の3(約245万人)となります。高齢の経営者が増えることにより廃業が増え、経済が成り立たなくなることが考えられます。また、税負担の重さから、承継が困難になる場合もあるでしょう。

このことから、国は2027年までの期間限定で、事業承継時の贈与税・相続税の納税猶予や免除が受けられる特例措置である「特例事業承継税制」を設けました。

今回は相続税の納税猶予について解説します。

 

適用要件

大きく下記の4つの要件があり、また申告後は5年間都道府県庁と税務署へ毎年、6年目以降は3年に一回税務署への書類提出が必須です。

以下:国税庁HPより

 

1.会社の主な要件

次の会社のいずれにも該当しないこと

・上場会社

・中小企業者に該当しない会社

・風俗営業会社

・資産管理会社(一定の要件を満たすものを除く)

 

2.後継者である受贈者の主な要件

・相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において会社の代表権を有していること

・相続開始の時において、後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること

・後継者の有する議決権数が、次のイ又はロに該当すること(特例措置)

イ.後継者が1人の場合

後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること

ロ.後継者が2人又は3人の場合

総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、かつ、後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること

 

3.先代経営者等である贈与者の主な要件

・会社の代表権を有していたこと

・相続開始直前において、被相続人及び被相続人と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと

 

4.担保提供

納税が猶予される贈与税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供すること

※この制度の適用を受ける非上場株式等の全てを担保として提供した場合には、納税が猶予される贈与税額及び利子税の額に見合う担保の提供があったものとみなされます。

 

 

納税猶予を受けるための手続き

納税猶予を受けるためには、「特例承継計画」を都道府県へ提出・都道府県知事の認定・税務署への申告が必要です。提出先は「主たる事務所の所在地を管轄する都道府県庁・税務署」です。

具体的な手順は、下記のとおりです。

 

1.承継計画の策定

会社が『特例承継計画』を作成し、認定経営革新等支援機関(税理士・商工会・商工会議所等)が所見を記載する。

※『特例承継計画』は後継者や今後の経営見通し等が記載されたもの。

2.2023年3月31日までに都府県知事に特例承継計画を提出・確認を受ける

※2023年3月31日までに相続・贈与を行う場合は、相続・贈与後に承継計画を提出することも可能。

 

3.相続の開始

 

4.認定申請

相続の開始後8か月以内に都道府県知事へ申請。

承継計画を添付する。

 

5.税務署へ申告

・認定書の写しと相続税の申告書等を提出。

 

6.申告期限後5年間

・都道府県庁へ「年次報告書」を提出(年1回)

・税務署へ「継続届出書」を提出(年1回)

※継続報告5年間の間に事業が存続していない場合、猶予税額の全額または一部、および利子税を納付する。ただし、やむを得ない理由がある場合には、一定部分の猶予税額が免除される場合あり。

 

7.5年経過後は実績報告

・雇用が5年平均8割を下回った場合には、満たせなかった理由を記載し、認定支援機関が確認する。

その理由が経営状況の悪化である場合等には認定支援機関から指導・助言を受ける。

 

8.6年目以降

・税務署へ「継続届出書」を提出(3年に一回)

 

まとめ

特例事業承継税制は後継者問題や納税への不安を解消する可能性のある税制です。そのためにも承継計画の策定を行い、都道府県知事への提出と認定を得ましょう。その後の手続きも煩雑ですので、まずは専門家への相談をお勧めします。

 

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